神様との約束
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸にイスラエルが建設してきた入植地。
ガザでの戦闘が始まって以降、ユダヤ人入植者によるパレスチナ人への暴力が増え、イスラエル政府はさらに入植者住宅を建設すると発表しています。
先週は、ヨルダン川西岸にあるキリスト教徒の村で、イスラエルの入植者によって襲撃があったとの報道がありました。
テレビでも、入植者の一人が「わたしたちが神から約束された土地なのですから」、と発言していました。
「入植地」とは、パレスチナ人から奪った土地に造成されたユダヤ人専用住宅地のことです。
西岸での入植地建設は国際法上、一般的に違法とされているものの、イスラエルはこれに反論し続けており、入植地はイスラエルとパレスチナの間で特に激しい争点となっている問題の一つです。
(BBCニュースの記事より抜粋)
https://www.bbc.com/japanese/articles/clyvzkqwpgjo
2019年にイスラエルに巡礼に行った時の写真です。
ここは入植地ではありませんが、このようにイスラエルの土地では、いたるところで植林が進められていました。
誰も住んでいない土地でも、岩場に水道のパイプが張り巡らされ、土地の緑化が進められています。
聖書には確かに、神様がイスラエルの人々を「誰よりも小さい民族だから」選ばれたのだと書かれています。
「乳と蜜の流れる土地」への旅を通して、神様が人々に慈愛の心を示されたエピソードは、旧約の中でも美しく、わたしたちがいつも神様の愛に守られていることを想起させてくれます。
あなたは、あなたの神、主の聖なる民である。
あなたの神、主は地上のすべての民の中からあなたを選んで、ご自分の宝の民とされた。
主があなたたちに愛情を傾けて、あなたたちを選ばれたのは、あなたたちがほかのどの民よりも数が多かったからではない。
事実、あなたたちはすべての民の中で最も数の少ない民であった。
しかし、主はあなたたちを愛し、また先祖に立てた誓いを守られたので、主は強いその手であなたたちを導き出し、奴隷の家から、エジプトの王ファラオの手からあなたを贖われた。
(申命記7・6~8)
イスラエルの地を神様がユダヤ民族だけに与えられた、というのは間違っていると断言できるでしょうか。
あるいは、その通りだ、と断言できるでしょうか。
トランプ大統領、プーチン大統領の言動を見ていて、「嘘つきだ」「信じられない」と思うのですが、当の本人たちは、自分は間違っていないという強い確信と信念があるようです。
創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記はモーセ5書といい、ここに書かれた教えをユダヤ教徒は大切に守っています。
イスラエルの人々(全員ではないでしょうが)、特に熱心なユダヤ教徒は、聖書に書かれているのだから、この土地は神様が自分たちに約束されたものなのだ、と信じて疑わないのです。
それ故、あなたの神、主こそが神であることを知りなさい。
主は誠実な神であって、主を愛し、その命令を守るものには、契約を守り、慈しみを千代にまで施されるが、主を憎む者それぞれに報いて滅ぼされる。
主を憎む者それぞれに猶予なく報復される。
(申命記7・9~10)
続きには、このように書かれています。
フランシスコ会訳では「主を憎む者」となっている言葉は、共同訳では「御自分を否む者」です。
このことばが何を言わんとしているのか。
ガザでのジェノサイドも、一方的な(暴力を伴う)入植地開発も、人道上は許されるものではありませんが、神様との約束を妄信的に信じる人々には、こちら側の正論を押し付けても通じ合うことは無理なのでしょうか。
人道に反することこそが、神様を否むことではないでしょうか。
神様がわたしたちに約束されたのは、世の終わりまでいつもわたしたちとともにいてくださる(マタイ28・20)、ということです。
これは、キリスト教徒だけの教えではないと思います。
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ここにきて、「パレスチナを国家として承認する意向がある」と表明する動きが出ています。
フランス、イギリス、カナダの表明に続き、他に数か国も追随するようです。
これまでの歴史と複雑な国際情勢の故、とはいえ、民族の尊厳を守り独立を決めるのが軍事力を持った西欧諸国という現実を、どう受け止めればよいのでしょうか。
8/6~15は日本カトリック平和旬間となっています。
わたしたちにとって戦後80年、ではありますが、世界では戦争は終わっていません。
教皇様の8月の意向は、「共存のために」です。
この祈りのことばが本当に素晴らしく、毎日全世界で唱えることができれば、と心から願います。
+基本の祈り
「共存することがより困難に見える社会が、民族的、政治的、宗教的、またイデオロギー的な理由による対立の誘惑に負けませんように。」
+黙想のための祈り
イエスよ、わたしたちの歴史の主よ、誠実な友、生ける現存よ、疲れを知らずわたしたちに会いに来られる方、あなたの平和を必要とするわたしたちがここにいます。
わたしたちは恐れと分裂の時代に生きています。
まるで自分たちしかいないかのように振る舞い、互いを隔てる壁を築き、自分たちが兄弟姉妹であることを忘れています。
主よ、あなたの霊を遣わしてください。
互いに理解し合い、耳を傾け合い、尊敬と思いやりをもって共に生きる望みをわたしたちの中に再び燃え立たせるために。
対話の道を模索する勇気をお与えください。
対立に兄弟愛の態度で答え、違いを恐れることなく他者に心を開く勇気をお与えください。
わたしたちを橋を架ける者としてください。
国境やイデオロギーを乗り越え、心の目で他者を見つめ、一人ひとりの中に侵すことのできない尊厳を認められるようにしてください。
希望が花開くことができる場所、多様性が脅威ではなく、わたしたちをより人間らしくする豊かさとなる場所を創造できるようにお助けください。
アーメン。